海外の酒蔵
日本酒はアメリカを中心に欧米でも作られています。今回は欧米を中心とした国外の酒造事情(マッサン海外バージョン)についてお伝えいたします。
南北アメリカ大陸での酒造りは日本人移民により作られていた太平洋戦争前と戦後の二期に分けられます。
戦前
ホノルル酒造(銘柄:宝正宗、宝娘)
1885年から始まったハワイ王国への移民。それに伴い、1908年創業で海外最古の酒造会社。創業時は事例のない亜熱帯、カリフォルニア米での酒造りのため、出荷製品の腐食による返品の繰り返し。結局、酒蔵全部を冷房により、厳寒期に見立てて酒造りを成功させる。1918年の禁酒法、1941年の真珠湾攻撃と2度に渡り休造を余儀なくされる。
1947年に本土から招かれた技術者・故二瓶孝夫氏により、酒造再開。1961年に事例のない「泡なし酵母」を発見する。発酵中に泡をほとんど出さないこの酵母は、現在日本全国にて使用されている。四季醸造も大手酒造メーカーが取り入れた。1986年に米国大手酒造メーカーに買収され、6年後に醸造中止となる。
Tozan (銘柄:東麒麟)
三菱財閥創始者が1927年に設立した東山農場にて1934年より日本酒が作られています。近年はキリンビールからの資本と機械が導入されたことにより、本格的な味になりました。元々は日本人移民が愛飲していましたが、日本食ブーム以来ブラジル人にも古くから現地生産されている日本酒として受けいられるようになりました。ブラジル流の飲み方として「酒ピリーニャ」(ライムと砂糖、氷を混ぜたカクテル)としてセレブ層を中心に人気があるそうです。ちなみに、日本産の日本酒を「酒ピリーニャ」にすると、イマイチ美味しく出来ないそうです。
戦後
日本メーカーのアメリカ進出
カリフォルニア州には大関(1979年)宝(1982年)、八重垣(1987年)、月桂冠(1989年)の4社が進出しています。良質なカリフォルニア産のジャポニカ米とロッキー山脈からの雪解け水を原料にした日本酒を作っております。
現地JIZAKEーアメリカ
SakeOne (http://sakeone.com)
オレゴン州にあるアメリカ人経営の酒造会社ですが、青森にある1856年創業の桃川という酒蔵との共同プロジェクトという形で1992年にスタートしました(1998年に桃川は撤退)。「Momokawa」銘柄の純米吟醸酒、「g Joy」銘柄の濁り酒の他にもアメリカ人好みの味に仕上げた「ムーンストーン」というフルーツ風味のやココナッツとレモングラス風味の日本酒ベースのリカーも販売しています。自社製以外にも日本から直輸入した日本酒と焼酎の販売も行っております。
Moto-i (https://www.moto-i.com/sake-brewery/)
全米初のバー併設の酒蔵として5年の準備期間を経て2008年にミネソタ州ミネアポリスに創業されました。酒造技術はSakeOneにて学んだそうです。純米生酒を製造し、精米歩合8割から4割にわたる6種類の日本酒を作っています。北米では珍しく、冬限定にて醸造しています。現在はラーメン屋と日本酒バー併設のレストランとして営業しております。
Texas Sake Company (http://www.txsake.com)
2011年にテキサス州オースティンに誕生したオーガニック(有機)酒造会社。現地にて生産されるお米は1904年に日本人により持ち込まれたそうです。「Texas Saké」銘柄で純米酒とにごり酒を醸造しています。2013年には6000本出荷しました。
Cedar River Brewing Company (http://cedarriverbrewing.com/Default.aspx)
ワシントン州シアトルにて2012年に創業された酒造会社です。純米、生酒、にごり酒、現地木材での樽酒の醸造をしています。
Blue Kudzu Sake Company
2014年にノースカロライナ州アシュヴィルにレストランと併設でスタートした酒造会社です。日本酒について広く知ってもらう事をテーマに、幅広い日本酒のメニューを用意するも、2015年に閉業。
Ben’s American Sake (http://www.benstuneup.com)
同じくノースカロライナ州アシュヴィルのラーメン・居酒屋レストランでビールと共に日本酒の醸造もスタートしました。
Blue Current Brewery (http://bluecurrent.net)
メイン州にて2015年にスタートした純米吟醸の酒造会社です。カリフォルニア産のコシヒカリを6割まで磨き、現地の湧き水を原料とした「blue current」銘柄の日本酒です。2016年にロンドンのコンテスト(London Saké Challenge)にて金賞を受賞しました。
カナダ
Artisan sake maker (http://artisansakemaker.com)
カナダ初の酒造会社としてヴァンクーヴァーにて2007年に日本人により創業されました。日本から酒米を輸入してますが、2009年よりカナダでの酒米生産をスタートさせています。「OSAKE」という銘柄で年間12000本の純米日本酒を製造しており、2000本はカナダ米を使用しています。
Nipro Brewery・YK3 http://www.yk3sake.com
長野から杜氏を迎えてカナダのリッチモンドにてNiproとして創業し2010年に買収されYK3として生まれ変わりました。カナダロッキー山脈の雪解け水とカリフォルニア米を原料として「悠」銘柄にて純米酒、純米にごり酒、全量麹仕込みの3種類の日本酒を醸造しています。
Ontario Spring Water Company http://ontariosake.com
カナダ・トロントにある酒造会社で2011年に創業しました。元々、宮崎県から日本酒を輸入販売していた為、同酒蔵から酒造過程におけるアドバイス等も受けたそうです。軟水に属する水源を生かし、「泉」という銘柄の元に口当たりの良い純米生酒を醸造しております。
ブラジル
Tozan
三菱財閥創始者1927年に設立した東山農場にて1934年より「東麒麟」という銘柄の日本酒が作られています。近年はキリンビールからの資本と機械が導入されたことにより、本格的な味になりました。元々は日本人移民が愛飲していましたが、日本食ブーム以来ブラジル人にも古くから現地生産されている日本酒として受けいられるようになりました。ブラジル流の飲み方として「酒ピリーニャ」(ライムと砂糖、氷を混ぜたカクテル)としてセレブ層を中心に人気があるそうです。ちなみに、日本産の日本酒を「酒ピリーニャ」にすると、イマイチ美味しく出来ないそうです。
Sakura Nakaya
元々、ブラジルにて現地醤油製造をしてましたが、「酒ピリーニャ」人気に煽られ2007年に「大地」銘柄で日本酒製造に参入しました。
ブラジルにはその他にもSake Fuji、Sake Okinawa、Sake Ryu、Sake Jun Daiti、 Sake Sakeihという酒造会社があるそうですが、詳細情報がつかめておりません。
オセアニア
San Masamune (http://www.sun-masamune.com.au/home.htm)
1980年代にオーストラリアの米製造シンジケートと日本企業が安く生産できる現地米を日本に輸出するプロジェクトを立ち上げ、その際に現地米を使った日本酒の製造が試されました。吟醸と大吟醸の生産が可能だったため、1995年に伊丹の小西酒造が買収しシドニー郊外にて「豪州」という銘柄の元に日本酒製造を開始しました。最初は日本へ逆輸出していましたが、近年アメリカやアジア市場、またオーストラリア現地での市場を開拓しました。純米、吟醸、大吟醸、にごり酒、梅酒、カクテル等幅広い展開をしています。また、日本酒とビールのハイブリッド酒も開発されました。
ヨーロッパ
Nøgne Ø (http://www.nogne-o.com/sake/)
ノルウェー最大規模の地ビール会社が2010年にヨーロッパ初の酒蔵として日本酒製造を開始しました。北海道から酒米を輸入し山廃仕込みにて「裸島」という銘柄で、純米無濾過生原酒を醸造しております。
Dragon sake
1000種類以上のアルコール飲料を製造しているオランダのToorqnk Distilleriesにより作られている日本酒。イギリスにて最も手に入りやすく、安い日本酒として4大スーパーマーケットでも販売されています。
Dojima Sake Brewery (http://www.dojimabrewery.com/home.html)
2015年に大阪の堂島麦酒醸造所がイギリス発の醸造所を作りました。ビールや日本酒の生産をし、600年の歴史を持つ酒蔵で、日本の酒造会社では初めてというヨーロッパでの醸造所建設(費用20億円)となりました。硬水を軟水に変える装置を使用し、日本やアメリカから酒米を輸入して醸造する予定です。
Goodness Sake (http://www.goodnesssake.co.uk)
イギリスのブライトンにて今年度から醸造される予定です。
Arran Brewery
スコットランドの地ビール会社も日本酒醸造を開始するようです。
アジア
アジア各国でも日本酒は作られています。
台湾:1997年より「玉泉清酒」(Taiwao tobacco & Liquor corporation), 2008年より「初霧」(Wu-Feng farmer’s association)
韓国:1945年より「清河」、「白花寿福」、「雪花」銘柄(Doosan Liquor BG), その他小規模の薬酒メーカーも醸造をしています。
中国:宝酒造が1995年より開始、大関との技術提携にて2003年より醸造開始、中谷酒造、甘強酒造、木戸泉酒造、大石酒造、藤崎摠兵衛商店など日本の酒造会社が出資して参入。他にも現地資本での酒造メーカーもあるようです。
ベトナム:「越の一」、「娘薫」銘柄で1996年に福岡の土木会社経営者が設立。
タイ:「忍」銘柄で1995年より日本人の醸造指導の元に生産開始。
参考文献
http://www.dewazakura.co.jp/hawaii/history.html
http://www.sakebunka.co.jp/oversea/hawaii/hawaii_03.html
http://homebrewsake.com/2010/10/17/us-sake-brewers-part-1-–-sake-breweries/
http://washoku-lab.net/archives/4210
http://montecristomagazine.com/magazine/summer-2011/artisan-sake-maker-masa-shiroki
http://jp.sake-times.com/knowledge/sakagura/sake_canada_yu_1
http://sakebunka.sub.jp/column/world_brazil/archives/000514.html